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2024年度 特待生レポート [後期]
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姉川桃子(あねがわ ももこ)
第70期予科(小森輝彦クラス)
第70期予科(小森輝彦クラス)
予科クラスの後期では、モーツァルトの作品を中心に大アンサンブルに取り組みます。
私の所属する予科朝クラスでは、モーツァルト作曲の『フィガロの結婚』『ドン・ジョヴァンニ』『コジ・ファン・トゥッテ』『皇帝ティートの慈悲』『魔笛』、そしてチマローザ作曲の『秘密の結婚』を題材に学びました。大アンサンブルを通じて、音楽や芝居への取り組み方が大きく変わり、皆がそれぞれ新たな課題に向き合いながら充実した学びを得られたのではないかと思います。
私は『秘密の結婚』No.4のエリゼッタと『魔笛』No.20のパミーナを担当しました。
『秘密の結婚』では、歌唱に意識が向きすぎる傾向がある私にとって、エリゼッタの怒りや煽る感情を身体で表現することは大きな課題でした。
演技指導講師の深作健太さんと演出助手の大川珠季さんから、"妹カロリーナからの煽りが彼女のコンプレックスを刺激し、怒りにつながる"という視点をいただき、顔に痣のメイクを施すというアイデアを試しました。ト書きにはない内面の心情を掘り下げ、役を一人の人間として捉える作業は新鮮で、表現の幅が大きく広がる貴重な経験となりました。
『魔笛』では、初めてドイツ語のオペラ(ジングシュピール)に挑戦しました。特に発音に苦戦しましたが、後期最初のレッスンで小森さんによる発音講座があり、ご自身の歌唱を交えながら分かりやすくご指導してくださいました。また声楽講師の冨平安希子さんや藤田彩歌さん、ピアニストの先生方が、稽古やコレペティのレッスンの際に子音の扱いや歌い方を細かく指導してくださり、そのおかげでドイツ語への苦手意識を克服し前向きに取り組むことができました。
さらに、現在第一線でご活躍されている、助演の野村光洋さんや花房英里子さんの演技や歌唱を間近で拝見し、実際に共演できたことは、研修所ならではの貴重な経験でした。
後期からは指揮の河原哲也さんのご指導も加わり、各演目の音楽表現をより深く学ぶことができました。前期以上に、実際のオペラ稽古の現場に近い環境で学び、本格的な演奏へのアプローチができた半年間であったと感じています。
一年間の研修を通して、研修所は"学校のような場所"という入所前のイメージとは大きく異なることを実感しました。小森クラスでは先生と生徒の垣根をなくし、“職業訓練の場”のように研修生が表現者として自由に試し、討論できる環境が整えられていました。
日本では協調性を重んじるあまり、自身の悩みや疑問を口にしにくいことがありますが、ここでは失敗を恐れずに意見を交わせる環境が築かれていました。研修生も最初は遠慮がちだったものの、後期には役の解釈や演目について積極的に話し合い、先生方にも積極的に質問するようになり、非常に良いコミュニケーションが生まれていたと思います。
また私自身はこの一年で、役の心情や身体表現と歌唱を結びつけることに悩んだ時期がありました。しかし先生方が技術面だけでなく、精神面にも目を配り、的確なご指導をしてくださったおかげで、心の殻を破り表現と歌唱を結びつける感覚を得ることができました。
この経験は私にとって大きな成長であり、これからの活動に活かしていきたいと思います。
この一年間の貴重な学びに心から感謝申し上げます。
今後もより良い演奏を目指して、私らしく精進してまいります。
私の所属する予科朝クラスでは、モーツァルト作曲の『フィガロの結婚』『ドン・ジョヴァンニ』『コジ・ファン・トゥッテ』『皇帝ティートの慈悲』『魔笛』、そしてチマローザ作曲の『秘密の結婚』を題材に学びました。大アンサンブルを通じて、音楽や芝居への取り組み方が大きく変わり、皆がそれぞれ新たな課題に向き合いながら充実した学びを得られたのではないかと思います。
私は『秘密の結婚』No.4のエリゼッタと『魔笛』No.20のパミーナを担当しました。
『秘密の結婚』では、歌唱に意識が向きすぎる傾向がある私にとって、エリゼッタの怒りや煽る感情を身体で表現することは大きな課題でした。
演技指導講師の深作健太さんと演出助手の大川珠季さんから、"妹カロリーナからの煽りが彼女のコンプレックスを刺激し、怒りにつながる"という視点をいただき、顔に痣のメイクを施すというアイデアを試しました。ト書きにはない内面の心情を掘り下げ、役を一人の人間として捉える作業は新鮮で、表現の幅が大きく広がる貴重な経験となりました。
『魔笛』では、初めてドイツ語のオペラ(ジングシュピール)に挑戦しました。特に発音に苦戦しましたが、後期最初のレッスンで小森さんによる発音講座があり、ご自身の歌唱を交えながら分かりやすくご指導してくださいました。また声楽講師の冨平安希子さんや藤田彩歌さん、ピアニストの先生方が、稽古やコレペティのレッスンの際に子音の扱いや歌い方を細かく指導してくださり、そのおかげでドイツ語への苦手意識を克服し前向きに取り組むことができました。
さらに、現在第一線でご活躍されている、助演の野村光洋さんや花房英里子さんの演技や歌唱を間近で拝見し、実際に共演できたことは、研修所ならではの貴重な経験でした。
後期からは指揮の河原哲也さんのご指導も加わり、各演目の音楽表現をより深く学ぶことができました。前期以上に、実際のオペラ稽古の現場に近い環境で学び、本格的な演奏へのアプローチができた半年間であったと感じています。
一年間の研修を通して、研修所は"学校のような場所"という入所前のイメージとは大きく異なることを実感しました。小森クラスでは先生と生徒の垣根をなくし、“職業訓練の場”のように研修生が表現者として自由に試し、討論できる環境が整えられていました。
日本では協調性を重んじるあまり、自身の悩みや疑問を口にしにくいことがありますが、ここでは失敗を恐れずに意見を交わせる環境が築かれていました。研修生も最初は遠慮がちだったものの、後期には役の解釈や演目について積極的に話し合い、先生方にも積極的に質問するようになり、非常に良いコミュニケーションが生まれていたと思います。
また私自身はこの一年で、役の心情や身体表現と歌唱を結びつけることに悩んだ時期がありました。しかし先生方が技術面だけでなく、精神面にも目を配り、的確なご指導をしてくださったおかげで、心の殻を破り表現と歌唱を結びつける感覚を得ることができました。
この経験は私にとって大きな成長であり、これからの活動に活かしていきたいと思います。
この一年間の貴重な学びに心から感謝申し上げます。
今後もより良い演奏を目指して、私らしく精進してまいります。

天野壽理亜(あまの じゅりあ)
第70期予科(宮本益光クラス)
第70期予科(宮本益光クラス)
二期会オペラ研修所予科、後期研修では、『フィガロの結婚』『コジ・ファン・トゥッテ』『ドン・ジョヴァンニ』の三作品から、五~六声部の重唱が含まれるシーンを学びました。
-後期研修で心掛けたこと-
私は『フィガロの結婚』のスザンナと『コジ・ファン・トゥッテ』のデスピーナのシーンを勉強させていただきました。スザンナとデスピーナはどちらも女中の役ですが、それぞれの背景や性格は大きく異なります。この役はどこから来て、どこへ向かうのか?どのような性格で、どんな行動原理を持っているのか?そういった役の本質を考え、理解を深めながら、自分の表現の殻を破っていくことを意識しました。特にデスピーナは、役柄が演技と歌の両面において新しい扉を開いてくれました。また、研修に取り組む姿勢として、失敗を恐れず未経験のことにも挑戦する、研修が惰性にならないよう、毎回新鮮な気持ちで臨むことを心掛けました。前期よりもさらに意識的に取り組むことで、より前進することができました。やりすぎたり、ズレてしまっても、先生方が常に的確なアドバイスで軌道修正してくださるため、これから研修に参加される方々には、トライアンドエラーの精神で準備してきたものを思い切りぶつけてほしいと思います。
-年間を通して成長したと感じること-
後期研修では、一つのシーンを二組で担当する形で進行しました。いわばダブルキャストのような形式で、全員が対になって学ぶスタイルです。自分の役だけでなく、他のペアや異なる声種の研修生を観察することで、さまざまな視点から学ぶことができました。お互いの個性を発見し、感心し、面白がりながら、時には課題を見つけ合い、互いに高め合うことができたと思います。オペラの現場には、歌手だけでなく多くのスタッフの方々が関わっています。多様な背景を持つ研修生たちと協力し合いながら試演会に臨めたことは、私自身はもちろん、研修生全員にとっても、今後オペラの現場で必要な、人間的・内面的な成長につながったのではないかと感じています。
-今後挑戦したいこと-
個人的なことですが、このレポートを書いている現在、世界で活躍する歌手たちが集う現場で仕事をさせていただいています。第一線で活躍する歌手たちの歌声は、言葉や状況に応じて適切なシェイプを持っていることを間近で実感しており、ただ大きい声でくびれのない寸胴な羊羹のように歌うのではなく、日本語でもそうであるように、歌に自然な表情がつくことの重要性を痛感しています。歌の練習はもちろんのこと、語学力の必要性を改めて感じる毎日です。より多くのオペラの現場に関わり続けられるよう、そして歌手として必要とされるよう、今後とも、個人でも二期会でも学びを深めていきます。来年度からはマスタークラスに編入し、より現実的なレパートリーに近い作品を学ぶことになると思います。より深い学びが得られるよう、しっかりと準備して臨みたいです。どんな一年になるのか、今からとても楽しみです。
-宮本クラス10周年-
二期会オペラ研修所における宮本益光先生のクラスは、今年で10年目を迎えました。宮本先生のクラスは、出席率が非常に高く、明るくのびのびとした雰囲気の中に適度な厳しさもあり、研修生全員が同じ方向を向いて学ぶことができました。これはひとえに、宮本先生をはじめとする先生方が、このクラスを作り上げてくださったおかげです。ここで学んだことを胸に刻み、それぞれの道で存分に活かしていきたいと思います。この場を借りて、心からの感謝を申し上げます。
-後期研修で心掛けたこと-
私は『フィガロの結婚』のスザンナと『コジ・ファン・トゥッテ』のデスピーナのシーンを勉強させていただきました。スザンナとデスピーナはどちらも女中の役ですが、それぞれの背景や性格は大きく異なります。この役はどこから来て、どこへ向かうのか?どのような性格で、どんな行動原理を持っているのか?そういった役の本質を考え、理解を深めながら、自分の表現の殻を破っていくことを意識しました。特にデスピーナは、役柄が演技と歌の両面において新しい扉を開いてくれました。また、研修に取り組む姿勢として、失敗を恐れず未経験のことにも挑戦する、研修が惰性にならないよう、毎回新鮮な気持ちで臨むことを心掛けました。前期よりもさらに意識的に取り組むことで、より前進することができました。やりすぎたり、ズレてしまっても、先生方が常に的確なアドバイスで軌道修正してくださるため、これから研修に参加される方々には、トライアンドエラーの精神で準備してきたものを思い切りぶつけてほしいと思います。
-年間を通して成長したと感じること-
後期研修では、一つのシーンを二組で担当する形で進行しました。いわばダブルキャストのような形式で、全員が対になって学ぶスタイルです。自分の役だけでなく、他のペアや異なる声種の研修生を観察することで、さまざまな視点から学ぶことができました。お互いの個性を発見し、感心し、面白がりながら、時には課題を見つけ合い、互いに高め合うことができたと思います。オペラの現場には、歌手だけでなく多くのスタッフの方々が関わっています。多様な背景を持つ研修生たちと協力し合いながら試演会に臨めたことは、私自身はもちろん、研修生全員にとっても、今後オペラの現場で必要な、人間的・内面的な成長につながったのではないかと感じています。
-今後挑戦したいこと-
個人的なことですが、このレポートを書いている現在、世界で活躍する歌手たちが集う現場で仕事をさせていただいています。第一線で活躍する歌手たちの歌声は、言葉や状況に応じて適切なシェイプを持っていることを間近で実感しており、ただ大きい声でくびれのない寸胴な羊羹のように歌うのではなく、日本語でもそうであるように、歌に自然な表情がつくことの重要性を痛感しています。歌の練習はもちろんのこと、語学力の必要性を改めて感じる毎日です。より多くのオペラの現場に関わり続けられるよう、そして歌手として必要とされるよう、今後とも、個人でも二期会でも学びを深めていきます。来年度からはマスタークラスに編入し、より現実的なレパートリーに近い作品を学ぶことになると思います。より深い学びが得られるよう、しっかりと準備して臨みたいです。どんな一年になるのか、今からとても楽しみです。
-宮本クラス10周年-
二期会オペラ研修所における宮本益光先生のクラスは、今年で10年目を迎えました。宮本先生のクラスは、出席率が非常に高く、明るくのびのびとした雰囲気の中に適度な厳しさもあり、研修生全員が同じ方向を向いて学ぶことができました。これはひとえに、宮本先生をはじめとする先生方が、このクラスを作り上げてくださったおかげです。ここで学んだことを胸に刻み、それぞれの道で存分に活かしていきたいと思います。この場を借りて、心からの感謝を申し上げます。

居島優海(いじま ゆうみ)
第70期予科(小森輝彦クラス)
第70期予科(小森輝彦クラス)
後期の授業の様子についてレポート及び一年間の総括をさせていただきます。
前期では二重唱が基本でしたが、後期では、二重唱から、大きいものだと六重唱のものまで、幅広いレパートリーで稽古が進みました。
そして、後期からは、指揮者の河原哲也さんが来てくださり、授業から試演会まで指揮を振ってくださいました。
日々の授業では、人数が増えて複雑になる音楽を、どうアプローチしていけばいいのかを丁寧に教えていただきました。
作品は、前期と同様、W.A. モーツァルトの『フィガロの結婚』『コジ・ファン・トゥッテ』『ドン・ジョヴァンニ』と、後期では、『魔笛』や、『皇帝ティートの慈悲』D. チマローザの『秘密の結婚』が加わり、計6作品から、9つのナンバーを朝クラスでは勉強しました。
その中からおおむね一人2つのナンバーが割り当てられました。
そして、私は『皇帝ティートの慈悲』No.7のセルヴィーリアと、『魔笛』No.21の童子1を勉強させていただきました。
まず、この二つの曲に共通する難しかった点は、相手の言葉を"聴く"ということです。前期で私は『ドン・ジョヴァンニ』No.2のドンナ・アンナを勉強したのですが、こちらは、ドンナ・アンナの感情爆発というような曲なので、どちらかというと、ドンナ・アンナが何かを発して、ドン・オッターヴィオが受け取るという曲でした。
しかし、後期では私がオッターヴィオ役のような、受け取る側だったので、相手の言ったことを聴き、それに対してリアクションをするというのがとても難しかったです。自分の中で作った演技をしてしまいがちになるのですが、ちゃんと相手から受け取って、演技をすること。それがオペラの面白さにつながるということを先生方に教えていただきました。
そして、『魔笛』のNo.21では、初めて4人の作品に取り組みました。
冒頭〜最後四重唱になるまでは童子3人の三重唱がベースとなりますが、童子を演じながら、この綺麗なハーモニーを作るというのが、とても難しかったです。今後どんな演出がついてもブレない歌を歌える歌手になりたいと強く感じました。
そして最後に、一年間、特待生として学ばせていただけたこと、心から感謝いたします。そのおかげで音楽を学ぶことに集中させていただけました。
信じて見守ってくださる方がいて、全力で自由に"やってみる"場所があるということはとてもありがたいことだと感じました。来年度からは本科に進学します。
今年一年、学んだことを活かして、来年さらにステップアップできるよう精進してまいります。
前期では二重唱が基本でしたが、後期では、二重唱から、大きいものだと六重唱のものまで、幅広いレパートリーで稽古が進みました。
そして、後期からは、指揮者の河原哲也さんが来てくださり、授業から試演会まで指揮を振ってくださいました。
日々の授業では、人数が増えて複雑になる音楽を、どうアプローチしていけばいいのかを丁寧に教えていただきました。
作品は、前期と同様、W.A. モーツァルトの『フィガロの結婚』『コジ・ファン・トゥッテ』『ドン・ジョヴァンニ』と、後期では、『魔笛』や、『皇帝ティートの慈悲』D. チマローザの『秘密の結婚』が加わり、計6作品から、9つのナンバーを朝クラスでは勉強しました。
その中からおおむね一人2つのナンバーが割り当てられました。
そして、私は『皇帝ティートの慈悲』No.7のセルヴィーリアと、『魔笛』No.21の童子1を勉強させていただきました。
まず、この二つの曲に共通する難しかった点は、相手の言葉を"聴く"ということです。前期で私は『ドン・ジョヴァンニ』No.2のドンナ・アンナを勉強したのですが、こちらは、ドンナ・アンナの感情爆発というような曲なので、どちらかというと、ドンナ・アンナが何かを発して、ドン・オッターヴィオが受け取るという曲でした。
しかし、後期では私がオッターヴィオ役のような、受け取る側だったので、相手の言ったことを聴き、それに対してリアクションをするというのがとても難しかったです。自分の中で作った演技をしてしまいがちになるのですが、ちゃんと相手から受け取って、演技をすること。それがオペラの面白さにつながるということを先生方に教えていただきました。
そして、『魔笛』のNo.21では、初めて4人の作品に取り組みました。
冒頭〜最後四重唱になるまでは童子3人の三重唱がベースとなりますが、童子を演じながら、この綺麗なハーモニーを作るというのが、とても難しかったです。今後どんな演出がついてもブレない歌を歌える歌手になりたいと強く感じました。
そして最後に、一年間、特待生として学ばせていただけたこと、心から感謝いたします。そのおかげで音楽を学ぶことに集中させていただけました。
信じて見守ってくださる方がいて、全力で自由に"やってみる"場所があるということはとてもありがたいことだと感じました。来年度からは本科に進学します。
今年一年、学んだことを活かして、来年さらにステップアップできるよう精進してまいります。

木山開貴(きやま はるき)
第70期予科(小森輝彦クラス)
第70期予科(小森輝彦クラス)
前期に引き続き、後期もモーツァルトの作品を中心に取り組みました。朝クラスでは、チマローザの『秘密の結婚』も加わりましたが、私は『ドン・ジョヴァンニ』No.16のマゼット役と『フィガロの結婚』No.7のアルマヴィーヴァ伯爵役を取り組みました。
前期と大きく異なるのは、大人数の重唱にも取り組んだ点です。1 つのシーンに対して同時に関わる人数が増えたため、それぞれのキャラクターが各々考えたことをまとめ表出させることにとても苦労しました。特に『ドン・ジョヴァンニ』No.16ではドンナ・アンナとドン・オッターヴィオ、ツェルリーナとマゼット、ドンナ・エルヴィラとレポレッロそれぞれの組み合わせが何を感じて演じるか考えたうえで、全体6人でどうシーンとしてのまとまりも持たせるかということにとても苦労し、時間がかかりました。
『フィガロの結婚』No.7では、レチタティーヴォで伯爵が隠れ、バジリオとスザンナの様子を伺っているわけですが、ただ隠れるのではなく隠れている時こそ、どの言葉で伯爵は反応していて曲に向かってどのようにエネルギーを向けていくか、そして常に伯爵でいつづけることが難しかったです。私が、一年を通して先生方から教わったことに当たり前のことですが「歌っていないときにもその役でいつづけないといけない、『木山開貴』になってはいけない」と再三にわたって仰っていたことが印象深いです。歌っていないとついつい素に戻って「次こうしてみたいな、ああしてみたいな」と頭の中で振り返りが起きてしまうことがあり、役にすごく集中しているつもりでも自分が出てきてしまうのを気を付けることが今後の課題として残りました。
一年を通して成長できたなと感じることに、これまで演技をほとんど勉強できる機会がありませんでした。そんな中、朝クラスの演技指導を担当してくださった深作健太さんは、そのシーンの設定と小道具だけを与えて、まず研修生自身に動いてもらうところから、どんどん肉付けをしていくスタイルでしたので、最初はどう動けばいいのだろうとすごく悩みましたが、練習を重ねるうちに、「こんなことをやってみたい」「とりあえず、やってみよう」などと、失敗を恐れず、演技に対して欲がどんどん出てきたのかなと感じています。
最後になりますが、一年間充実した環境で学ばせて頂いたことに心より感謝申し上げます。来年度は本科に進級する予定です。また沢山のことを学べることに今からとても楽しみにしていますし、予科で学んだことを糧に一歩一歩前進していきたいと思います。
前期と大きく異なるのは、大人数の重唱にも取り組んだ点です。1 つのシーンに対して同時に関わる人数が増えたため、それぞれのキャラクターが各々考えたことをまとめ表出させることにとても苦労しました。特に『ドン・ジョヴァンニ』No.16ではドンナ・アンナとドン・オッターヴィオ、ツェルリーナとマゼット、ドンナ・エルヴィラとレポレッロそれぞれの組み合わせが何を感じて演じるか考えたうえで、全体6人でどうシーンとしてのまとまりも持たせるかということにとても苦労し、時間がかかりました。
『フィガロの結婚』No.7では、レチタティーヴォで伯爵が隠れ、バジリオとスザンナの様子を伺っているわけですが、ただ隠れるのではなく隠れている時こそ、どの言葉で伯爵は反応していて曲に向かってどのようにエネルギーを向けていくか、そして常に伯爵でいつづけることが難しかったです。私が、一年を通して先生方から教わったことに当たり前のことですが「歌っていないときにもその役でいつづけないといけない、『木山開貴』になってはいけない」と再三にわたって仰っていたことが印象深いです。歌っていないとついつい素に戻って「次こうしてみたいな、ああしてみたいな」と頭の中で振り返りが起きてしまうことがあり、役にすごく集中しているつもりでも自分が出てきてしまうのを気を付けることが今後の課題として残りました。
一年を通して成長できたなと感じることに、これまで演技をほとんど勉強できる機会がありませんでした。そんな中、朝クラスの演技指導を担当してくださった深作健太さんは、そのシーンの設定と小道具だけを与えて、まず研修生自身に動いてもらうところから、どんどん肉付けをしていくスタイルでしたので、最初はどう動けばいいのだろうとすごく悩みましたが、練習を重ねるうちに、「こんなことをやってみたい」「とりあえず、やってみよう」などと、失敗を恐れず、演技に対して欲がどんどん出てきたのかなと感じています。
最後になりますが、一年間充実した環境で学ばせて頂いたことに心より感謝申し上げます。来年度は本科に進級する予定です。また沢山のことを学べることに今からとても楽しみにしていますし、予科で学んだことを糧に一歩一歩前進していきたいと思います。

岡田七海(おかだ ななみ)
第69期本科(萩原 潤クラス)
第69期本科(萩原 潤クラス)
本科後期の授業の様子と、一年間の総括をさせて頂きます。
後期は、終了試演会に向け、各々が自分の取り組みたい演目を提出し、それを基に先生が研修生ひとりひとりに合った演目を与えてくださいました。
私は、G.ドニゼッティ作曲『ドン・パスクアーレ』より、ノリーナ役として第1幕のマラテスタとの二重唱を勉強させて頂きました。
今までセリアを中心に勉強させて頂く機会が多く、自分自身もセリアが好きなこともあり、今回の修了試演会の演目も、セリアの演目で希望提出をしていました。しかし、ブッファをほとんど演じたことがなかった私に、主任の萩原潤先生から、「今後のためにも絶対に今年ブッファを勉強した方がためになるから、ブッファをやってみないか」とお話を頂き、『ドン・パスクアーレ』を勉強させて頂けることになりました。研修所に入所してから、苦戦しながらも楽しそうに活き活きとブッファを演じている同期達を見ながら、いつか自分もブッファに挑戦してみたいけれど、自分はこんなふうに動けるのだろうか、こんなふうに演技できるのだろうかと、常に未知の世界への不安を感じていたため、この機会に、今のクラスでブッファを勉強させて頂けることがとても楽しみでした。
ずっと演じてみたいと思っていた憧れのノリーナ。しかし、ノリーナの性格やキャラクターを自分の中に落として演じることがとても難しく、ノリーナらしくブッファを演じ切ることができるのか不安を抱えながら、試行錯誤を繰り返した3ヶ月間でした。
音楽稽古では、指揮の小﨑雅弘先生をはじめ、様々な先生方からご指導を頂き、イタリア語の言葉の発音やレチタティーヴォの言葉の捌き方、ノリーナの感情と音楽を結びつけるにはどのような表現で歌ったら良いかなど、さまざまな視点から細かくアプローチしたご指導を頂きました。ベルカントらしい美しい発声で歌うのはもちろんのこと、細かい言葉の捌き方や感情を音楽に乗せて表現しながらも、精度の高い演奏ができるよう精一杯取り組みました。
演技においては、前期で学んだことや反省を活かし、とにかく感情と演技を結びつけることが後期の課題でした。ノリーナの明るくまっすぐな性格をどのように演じるか、悩みながらも試行錯誤していく中で、お稽古を重ねていくうちに、ノリーナのキャラクターを少しずつ掴めるようになりました。ノリーナの性格や強さは、自分と少し似ているなと思う部分もあり、自分が今までに感じたことのある感情や経験値との共通点から演技のヒントを得たりして、ノリーナの感情への理解を深めました。また、演じていく中で、自分の演技の癖などもご指摘を頂き、その癖でノリーナのキャラクターの見え方が変わってしまっていることに気づき、癖を少しずつ減らしていけるよう努力しました。相手の言葉を受けるリアクション一つをとっても、受けてから演技するのではなく、先取りして演技をすることで、お客様から見た時にちょうど良いタイミングで受けているように見えたり、オーケストラの音楽からヒントを得てノリーナの感情の変化に繋げたり、単語の言葉一つ一つの意味を自分自身でしっかりと理解し演技に繋げることで、心から感情で動くことが出来たりと、セリアを勉強している時には気づくことのできなかった、自分がブッファを勉強したことで気づけたこと、学べたことが多くありました。そして、一つ一つの課題に向き合いながら毎回のお稽古を重ねるたびに、ノリーナを演じること、ノリーナとして舞台上で生きられることを、心の底から楽しめるようになりました。
慣れないブッファに不安を抱えながらも、出来ない自分に憤りを感じ、必死にノリーナと向き合った3ヶ月でしたが、この『ドン・パスクアーレ』という演目を通して、ノリーナとしてブッファを勉強させて頂くことができ、大変貴重な経験をさせて頂くことができました。
素晴らしい先生方のご指導の下、切磋琢磨し合った同期の仲間と、恵まれた環境で大好きなオペラを勉強させて頂くことができたこの一年間は、私にとってとても幸せでかけがえのない時間でした。一年間、特待生として学ばせて頂けたことに心から感謝申し上げます。
来年度からはマスタークラスに進学します。この素晴らしい環境で勉強させて頂けることに感謝の気持ちを忘れず、さらなる高みをめざし、これからも自分らしく精一杯精進して参ります。
後期は、終了試演会に向け、各々が自分の取り組みたい演目を提出し、それを基に先生が研修生ひとりひとりに合った演目を与えてくださいました。
私は、G.ドニゼッティ作曲『ドン・パスクアーレ』より、ノリーナ役として第1幕のマラテスタとの二重唱を勉強させて頂きました。
今までセリアを中心に勉強させて頂く機会が多く、自分自身もセリアが好きなこともあり、今回の修了試演会の演目も、セリアの演目で希望提出をしていました。しかし、ブッファをほとんど演じたことがなかった私に、主任の萩原潤先生から、「今後のためにも絶対に今年ブッファを勉強した方がためになるから、ブッファをやってみないか」とお話を頂き、『ドン・パスクアーレ』を勉強させて頂けることになりました。研修所に入所してから、苦戦しながらも楽しそうに活き活きとブッファを演じている同期達を見ながら、いつか自分もブッファに挑戦してみたいけれど、自分はこんなふうに動けるのだろうか、こんなふうに演技できるのだろうかと、常に未知の世界への不安を感じていたため、この機会に、今のクラスでブッファを勉強させて頂けることがとても楽しみでした。
ずっと演じてみたいと思っていた憧れのノリーナ。しかし、ノリーナの性格やキャラクターを自分の中に落として演じることがとても難しく、ノリーナらしくブッファを演じ切ることができるのか不安を抱えながら、試行錯誤を繰り返した3ヶ月間でした。
音楽稽古では、指揮の小﨑雅弘先生をはじめ、様々な先生方からご指導を頂き、イタリア語の言葉の発音やレチタティーヴォの言葉の捌き方、ノリーナの感情と音楽を結びつけるにはどのような表現で歌ったら良いかなど、さまざまな視点から細かくアプローチしたご指導を頂きました。ベルカントらしい美しい発声で歌うのはもちろんのこと、細かい言葉の捌き方や感情を音楽に乗せて表現しながらも、精度の高い演奏ができるよう精一杯取り組みました。
演技においては、前期で学んだことや反省を活かし、とにかく感情と演技を結びつけることが後期の課題でした。ノリーナの明るくまっすぐな性格をどのように演じるか、悩みながらも試行錯誤していく中で、お稽古を重ねていくうちに、ノリーナのキャラクターを少しずつ掴めるようになりました。ノリーナの性格や強さは、自分と少し似ているなと思う部分もあり、自分が今までに感じたことのある感情や経験値との共通点から演技のヒントを得たりして、ノリーナの感情への理解を深めました。また、演じていく中で、自分の演技の癖などもご指摘を頂き、その癖でノリーナのキャラクターの見え方が変わってしまっていることに気づき、癖を少しずつ減らしていけるよう努力しました。相手の言葉を受けるリアクション一つをとっても、受けてから演技するのではなく、先取りして演技をすることで、お客様から見た時にちょうど良いタイミングで受けているように見えたり、オーケストラの音楽からヒントを得てノリーナの感情の変化に繋げたり、単語の言葉一つ一つの意味を自分自身でしっかりと理解し演技に繋げることで、心から感情で動くことが出来たりと、セリアを勉強している時には気づくことのできなかった、自分がブッファを勉強したことで気づけたこと、学べたことが多くありました。そして、一つ一つの課題に向き合いながら毎回のお稽古を重ねるたびに、ノリーナを演じること、ノリーナとして舞台上で生きられることを、心の底から楽しめるようになりました。
慣れないブッファに不安を抱えながらも、出来ない自分に憤りを感じ、必死にノリーナと向き合った3ヶ月でしたが、この『ドン・パスクアーレ』という演目を通して、ノリーナとしてブッファを勉強させて頂くことができ、大変貴重な経験をさせて頂くことができました。
素晴らしい先生方のご指導の下、切磋琢磨し合った同期の仲間と、恵まれた環境で大好きなオペラを勉強させて頂くことができたこの一年間は、私にとってとても幸せでかけがえのない時間でした。一年間、特待生として学ばせて頂けたことに心から感謝申し上げます。
来年度からはマスタークラスに進学します。この素晴らしい環境で勉強させて頂けることに感謝の気持ちを忘れず、さらなる高みをめざし、これからも自分らしく精一杯精進して参ります。

早川 愛(はやかわ あい)
第69期本科(萩原 潤クラス)
第69期本科(萩原 潤クラス)
私は後期の授業では、モーツァルトのオペラ『フィガロの結婚』より第2幕フィナーレ(No.14~:伯爵夫人役)を学びました。
後期のカリキュラムでは、各々が今後のレパートリーとして取り組みたい役を選び、それに基づいて稽古が進められます。
他の研修生は、『蝶々夫人』『マノン』『ナクソス島のアリアドネ』など、さまざまなオペラ作品を選んでいました。
私も当初は『シモン・ボッカネグラ』や『トスカ』の二重唱に憧れ、それらの作品に取り組みたいと考えていましたが、一度立ち止まって主任の萩原潤先生にも相談をさせていただきながら、自分の本当の課題は何かを改めて考えることにしました。
そこで前期・中期の授業を通じて「相手の台詞に反応すること」がまだまだ不足しているということが一番に挙げられ、その力を養うためにモーツァルトのブッファを選択することに決めました。(本科から入所したため、予科でモーツァルトのオペラを学んでいなかったことも理由の一つです)
そして『フィガロの結婚』の稽古が始まって早々、自身の「相手の台詞への反応」の鈍さを改めて痛感しました。
私は一人で楽譜と向き合う際に、演技のプランを決めすぎてしまい、稽古場で相手の言葉や動きに即座に対応できないという弱点がありました。演技指導講師の今井伸昭先生が「稽古場では脳みそで動くな!」と常に仰っていたように、私はまさに頭で考えすぎてしまっていたのだと思います。
レチタティーヴォに関しても今まで勉強したのはアリアにおいてのみで、重唱においては経験が無かったためかなり苦戦しました。たった1フレーズにおいても、楽譜に書かれた休符や音型の上行下降、言葉の後の「…」に至るまでの全てに意味があり、それらを感情の理由として明確にしなければなりません。つまり根拠の無い感情表現は許されず、楽譜の中にある要素から意味を見出さなければならないのです。
この作業は私にとって難しいものでしたが、徹底的に分析することで感情の流れが自然に身体に入り相手の言葉を聞く余裕が生まれ、結果的に「生きた反応」が出来るようになりました。この変化を実感出来たことは、私にとって非常に大きな収穫でした。
本科での一年間は本当に刺激的な日々で、素晴らしい先生方のご指導、同期との切磋琢磨を通じて学べたことは本当に数えきれないほどあります。
私は4月からは大学院に進学するため研修所は一旦休学しますが、学んだことをしっかりと身につけ、さらに成長した姿で戻って来られるよう精進致します。
後期のカリキュラムでは、各々が今後のレパートリーとして取り組みたい役を選び、それに基づいて稽古が進められます。
他の研修生は、『蝶々夫人』『マノン』『ナクソス島のアリアドネ』など、さまざまなオペラ作品を選んでいました。
私も当初は『シモン・ボッカネグラ』や『トスカ』の二重唱に憧れ、それらの作品に取り組みたいと考えていましたが、一度立ち止まって主任の萩原潤先生にも相談をさせていただきながら、自分の本当の課題は何かを改めて考えることにしました。
そこで前期・中期の授業を通じて「相手の台詞に反応すること」がまだまだ不足しているということが一番に挙げられ、その力を養うためにモーツァルトのブッファを選択することに決めました。(本科から入所したため、予科でモーツァルトのオペラを学んでいなかったことも理由の一つです)
そして『フィガロの結婚』の稽古が始まって早々、自身の「相手の台詞への反応」の鈍さを改めて痛感しました。
私は一人で楽譜と向き合う際に、演技のプランを決めすぎてしまい、稽古場で相手の言葉や動きに即座に対応できないという弱点がありました。演技指導講師の今井伸昭先生が「稽古場では脳みそで動くな!」と常に仰っていたように、私はまさに頭で考えすぎてしまっていたのだと思います。
レチタティーヴォに関しても今まで勉強したのはアリアにおいてのみで、重唱においては経験が無かったためかなり苦戦しました。たった1フレーズにおいても、楽譜に書かれた休符や音型の上行下降、言葉の後の「…」に至るまでの全てに意味があり、それらを感情の理由として明確にしなければなりません。つまり根拠の無い感情表現は許されず、楽譜の中にある要素から意味を見出さなければならないのです。
この作業は私にとって難しいものでしたが、徹底的に分析することで感情の流れが自然に身体に入り相手の言葉を聞く余裕が生まれ、結果的に「生きた反応」が出来るようになりました。この変化を実感出来たことは、私にとって非常に大きな収穫でした。
本科での一年間は本当に刺激的な日々で、素晴らしい先生方のご指導、同期との切磋琢磨を通じて学べたことは本当に数えきれないほどあります。
私は4月からは大学院に進学するため研修所は一旦休学しますが、学んだことをしっかりと身につけ、さらに成長した姿で戻って来られるよう精進致します。

加藤 楓(かとう かえで)
第68期マスタークラス(鹿野由之クラス)
第68期マスタークラス(鹿野由之クラス)
後期演目では、マスネ作曲『マノン』第3幕第2場のマノンを演じた。この場面は、マノンが元恋人を取り戻すために誘惑し、積極的に仕掛けていく重要なシーンである。これまでの自身の経験を振り返ってみても、こうした大胆な役どころに挑戦するのは初めてのことで、最初はなかなか思い切ることができなかった。どこか遠慮がちになってしまい、感情の振り切りが足りないと感じることが多かった。
しかし、納得のいく仕上がりに必ず到達したいという強い思いがあったため、授業のたびに先生方からいただく言葉を大切にし、指摘された部分は必ずブラッシュアップできるよう意識して取り組んだ。最初は思うように表現しきれないもどかしさもあったが、稽古を重ねるごとに少しずつ自分の殻を破り、新たな一歩を踏み出せている感覚があった。特に、マノンという人物の本質を理解し、彼女の行動の裏にある感情をより深く掘り下げることで、表現に説得力が生まれることを実感した。単に「誘惑する」という表面的な演技ではなく、その奥にある切実な想いや必死さが伝わるようにすることが、自分にとっての大きな課題だった。
また、音楽の面でも多くの気づきがあった。マスネの楽譜は非常に精緻に作られており、一つひとつの音やフレーズに意味が込められている。そのため、細部を丁寧に読み込むことが、演技を自然に引き出す鍵になるのだと改めて学んだ。指揮の佐藤宏充先生や演技指導講師の澤田康子先生が、「楽譜を深く読むことが表現の自由につながる」と常々おっしゃっていた意味を、稽古を重ねる中で身をもって理解することができた。最初は音楽に乗せて演技をすることに精一杯で、楽譜の読み込みが足りず、自分の表現を狭めてしまっていることに気づかなかった。しかし、楽譜に込められた意図を深く探ることで、自然と演技が導かれ、より有機的な表現が生まれることを実感した。
こうした学びを経て、ゲネプロと本番では、現時点で自分が出し得る最高のものに到達できたと考えている。もちろん、まだまだ課題は多く残っているが、一つの役に真剣に向き合い、試行錯誤を重ねたことで得られたものは大きかった。そして何より、この経験を通じて、自分にはまだまだ伸びしろがあると実感できたことが最大の収穫だった。今回のマノンで培ったものを糧にし、今後もさらに表現の幅を広げていきたい。
最後に。東京二期会オペラ研修所で過ごした日々は、自分にとって非常に実り多く、心から幸せに感じている。この貴重な学びを糧に、さらなる成長を遂げ、歌手としての道を力強く歩んでいきたい。
しかし、納得のいく仕上がりに必ず到達したいという強い思いがあったため、授業のたびに先生方からいただく言葉を大切にし、指摘された部分は必ずブラッシュアップできるよう意識して取り組んだ。最初は思うように表現しきれないもどかしさもあったが、稽古を重ねるごとに少しずつ自分の殻を破り、新たな一歩を踏み出せている感覚があった。特に、マノンという人物の本質を理解し、彼女の行動の裏にある感情をより深く掘り下げることで、表現に説得力が生まれることを実感した。単に「誘惑する」という表面的な演技ではなく、その奥にある切実な想いや必死さが伝わるようにすることが、自分にとっての大きな課題だった。
また、音楽の面でも多くの気づきがあった。マスネの楽譜は非常に精緻に作られており、一つひとつの音やフレーズに意味が込められている。そのため、細部を丁寧に読み込むことが、演技を自然に引き出す鍵になるのだと改めて学んだ。指揮の佐藤宏充先生や演技指導講師の澤田康子先生が、「楽譜を深く読むことが表現の自由につながる」と常々おっしゃっていた意味を、稽古を重ねる中で身をもって理解することができた。最初は音楽に乗せて演技をすることに精一杯で、楽譜の読み込みが足りず、自分の表現を狭めてしまっていることに気づかなかった。しかし、楽譜に込められた意図を深く探ることで、自然と演技が導かれ、より有機的な表現が生まれることを実感した。
こうした学びを経て、ゲネプロと本番では、現時点で自分が出し得る最高のものに到達できたと考えている。もちろん、まだまだ課題は多く残っているが、一つの役に真剣に向き合い、試行錯誤を重ねたことで得られたものは大きかった。そして何より、この経験を通じて、自分にはまだまだ伸びしろがあると実感できたことが最大の収穫だった。今回のマノンで培ったものを糧にし、今後もさらに表現の幅を広げていきたい。
最後に。東京二期会オペラ研修所で過ごした日々は、自分にとって非常に実り多く、心から幸せに感じている。この貴重な学びを糧に、さらなる成長を遂げ、歌手としての道を力強く歩んでいきたい。

川合真桜子(かわい まおこ)
第68期マスタークラス(大野徹也クラス)
第68期マスタークラス(大野徹也クラス)
マスタークラス一年間の総括をさせていただきます。
4月、マスタークラスに特待生として復学が決まった際、在所中にその立場や責任に苦悩することがあるだろうと想定していました。だからこそ、この一年間のテーマは、恐れずに挑戦するということを掲げました。加えて、すでに修了した先輩方やご指導いただいている先生方から、「研修所は、大学などの教育機関のように一人一人にコミットして大切に丁寧に教えてもらえるような場所だと思ってはいけない。毎回の授業がオーディションだと思いなさい。特に役をいただいて最初に歌う時、できるだけ暗譜して、十分に自信をもって歌える状態で持っていくこと。」というアドバイスをいただきました。
前期のアラベラ役は、役の発表から1週間ほどで初回授業でした。この授業の最初の歌唱のとき、「この子は歌える」と先生方に認識してもらわなければならないと、不安の混ざった緊張と準備してきたものを出し切りたいという興奮で、大きく手が震えていたことを今でも覚えています。
前期のアラベラ役に続き中期のロザリンデ役も、自分自身が今まで予想していなかった大きな役をいただき「なぜこの役なのか?」と先生方に尋ねたことがあります。「あなたにはこの役ができると思ったから。」と一言、言っていただき、自分では気が付くことのできなかった自分自身の新たな可能性を知りました。先生方の期待に応えたい、やり遂げたいという強い意志が芽生え、前期と中期を充実して過ごすことができたように思います。
後期はヴェルディ作曲の歌劇『リゴレット』から第1幕のジルダとリゴレットの重唱をいただきました。ヴェルディの作品は私の声にはまだ早いのではないかと、アリアも含めほとんど触れたことはありませんでした。しかし、将来的に必ず全幕歌いたいと考えていた役であり、マスタークラス研修生最後の演目としてこの役に挑戦できたことは、大きな経験となりました。後期のこの時期、外部で並行してブッファに取り組んでいました。相手役の方は普段イタリア在住の日本人で、イタリアオペラについてや舞台語としてのイタリア語、イタリア人は君が想像しているよりももっとこうなんだよ、と多くの知識を躊躇なく教えてくださり、この知識やテクニックを同時に研修所で生かすことができたのは幸いでした。
そして修了歌曲試験や修了アリア試験でも、今まで歌ったことのある安心して歌える曲ではなく、お世話になっているコレペティトールの先生に「今の川合さんに合う、できると思う。」と提案していただいた曲、今までの私なら難しいと諦めていたであろう曲にチャレンジしました。
必ず結果を出さなければならない、失敗は許されないというプレッシャーの中、失敗しないようにと無難にこなすのではなく、これは自分の可能性を広げるためのチャレンジなのだと、前向きな気持ちで新しい課題に挑んだことが、研修所での自分自身の成長に大きく繋がったように感じています。
最後に、この私の一年間の挑戦を、支え導いてくださった先生方、助演の先輩方、ならびに切磋琢磨できる環境の中で共に過ごした才能あふれる素晴らしい仲間たちに感謝申し上げます。一年間、ありがとうございました。
4月、マスタークラスに特待生として復学が決まった際、在所中にその立場や責任に苦悩することがあるだろうと想定していました。だからこそ、この一年間のテーマは、恐れずに挑戦するということを掲げました。加えて、すでに修了した先輩方やご指導いただいている先生方から、「研修所は、大学などの教育機関のように一人一人にコミットして大切に丁寧に教えてもらえるような場所だと思ってはいけない。毎回の授業がオーディションだと思いなさい。特に役をいただいて最初に歌う時、できるだけ暗譜して、十分に自信をもって歌える状態で持っていくこと。」というアドバイスをいただきました。
前期のアラベラ役は、役の発表から1週間ほどで初回授業でした。この授業の最初の歌唱のとき、「この子は歌える」と先生方に認識してもらわなければならないと、不安の混ざった緊張と準備してきたものを出し切りたいという興奮で、大きく手が震えていたことを今でも覚えています。
前期のアラベラ役に続き中期のロザリンデ役も、自分自身が今まで予想していなかった大きな役をいただき「なぜこの役なのか?」と先生方に尋ねたことがあります。「あなたにはこの役ができると思ったから。」と一言、言っていただき、自分では気が付くことのできなかった自分自身の新たな可能性を知りました。先生方の期待に応えたい、やり遂げたいという強い意志が芽生え、前期と中期を充実して過ごすことができたように思います。
後期はヴェルディ作曲の歌劇『リゴレット』から第1幕のジルダとリゴレットの重唱をいただきました。ヴェルディの作品は私の声にはまだ早いのではないかと、アリアも含めほとんど触れたことはありませんでした。しかし、将来的に必ず全幕歌いたいと考えていた役であり、マスタークラス研修生最後の演目としてこの役に挑戦できたことは、大きな経験となりました。後期のこの時期、外部で並行してブッファに取り組んでいました。相手役の方は普段イタリア在住の日本人で、イタリアオペラについてや舞台語としてのイタリア語、イタリア人は君が想像しているよりももっとこうなんだよ、と多くの知識を躊躇なく教えてくださり、この知識やテクニックを同時に研修所で生かすことができたのは幸いでした。
そして修了歌曲試験や修了アリア試験でも、今まで歌ったことのある安心して歌える曲ではなく、お世話になっているコレペティトールの先生に「今の川合さんに合う、できると思う。」と提案していただいた曲、今までの私なら難しいと諦めていたであろう曲にチャレンジしました。
必ず結果を出さなければならない、失敗は許されないというプレッシャーの中、失敗しないようにと無難にこなすのではなく、これは自分の可能性を広げるためのチャレンジなのだと、前向きな気持ちで新しい課題に挑んだことが、研修所での自分自身の成長に大きく繋がったように感じています。
最後に、この私の一年間の挑戦を、支え導いてくださった先生方、助演の先輩方、ならびに切磋琢磨できる環境の中で共に過ごした才能あふれる素晴らしい仲間たちに感謝申し上げます。一年間、ありがとうございました。